地域ブランディングの成功事例・成功のカギは感覚体験の提供

地域ブランディングの成功事例・成功のカギは感覚体験の提供

 

地域ブランディングの成功事例として、ここではゆずの村馬路村、熊本県のくまもん、愛媛県の今治タオルについて詳しくお伝えしています。

 

地域ブランディングまでのストーリー、成功した要因に分け、そて後半では地域ブランディングで成功するためのポイントも紹介していますので参考にされてください。

 

 

 

執筆:企業のブランディングを手掛ける空間デザイン会社GRACES 雨宮悠天

 

 

地域ブランディング成功事例

 

それではさっそく地域ブランディングの成功事例をいくつか挙げていきます。

 

地域ブランド至極の成功例
  • 高知県ゆずの村
  • 熊本県 くまモン
  • 愛媛県今治市今治タオル

 

 

高知県馬路村 ゆずの村

 

馬路村の地域ブランディングのストーリー

 

ゆずの村として有名な高知県馬路村については「土地の96%が森林」という環境から、もともと林業が盛んでした。しかし昭和30年代には衰退、村の存続すら危い状態だったとか。

 

再起をかけるための産業が考えられたとき、馬路村の村民が食事など日常的に使っていたことからゆずでの地域おこしが検討されました。

 

 

昭和38年からゆずの木の栽培が始まり、ゆずとはちみつを合わせたさわやかなドリンク(2023年現在・1日15万本販売)を販売、今ではゆずぽんず、ゆずコショウ、ゆずすし酢など実にさまざまな加工品がラインナップされています。

 

はじめからうまくいったわけではなかったと語られることが多いようですが、人口1000人程度の村の村おこしで地道に販路を拡大したりして今では年商30億に上るそうです。

 

 

なぜ馬路村は地域ブランディングで成功したのか

 

馬路村そのものをPR、「山奥で見渡す限り自然しかない」といった点をあえて前面に打ち出したことによって愛着を持ってもらうことが成功要因として語り継がれています。

 

加工食品以外にも、ゆずのアロマやゆずオイルを使ったコスメブランドが作られたこともよく成功要因の一つとして挙げられているようです。

 

 

 

 

ゆずの果汁を絞ったあとに残る果皮や種は重さで50%になり、加工食品を作るたびに毎回可食部以外を焼却しなければならないことからこうした道が考えられたとか。

 

 

 

種を圧搾したゆずオイルからは美肌効果が発見され、問い合わせが絶えなかったそうです。

 

 

 

また、馬路村の場合は上述「自然しかない馬路村」を巧みにブランディングして人を呼び込むことにも成功しています。

 

5 ゆずの森加工場

 

 

馬路村の地域ブランディング成功のポイントおさらい
  • 自然しかない馬路村をPR
  • 加工食品を特産にせずに「デイリーユーズ」に位置付けてもらおうとしている
  • 本来廃棄されていたゆずの果皮と種を有効利用し、アロマ商品や美肌効果高いコスメブランドにしている
  • 自然しかない馬路村に人を呼び込んで「場の価値を高めている

 

 

私自身、ご家族が高知県に住む知人から馬路村のゆずぽんずをいただいたことがあり、「特別なゆずぽんずだった」という記憶が残っています。

 

ボトルに描かれたゆずのイラストは上述「何もない馬路村をを売り物にしている」との印象通りユニーク、そしてそれ以上にこのゆずポン酢を使って何か美味しい料理を作ってみたいと思わされるものがあったように思います。

 

 

 

愛媛県今治市 今治タオル

 

今治タオルの地域ブランディンストーリー

 

愛媛県今治市は昔から綿織物で栄えており、1984年阿部平助がタオル製造を開始したのが今治タオルのはじまりです。

 

1980年代に格安のアジア製タオルが持て囃されるようになり、今治タオルは存続の危機が訪れます。

 

 

今治タオルの救世主として知られる佐藤可士和氏は、依頼主が組合ゆえトップダウンの組織ではないこと、そしてブランディングの予算が少ないことなどを理由に「果たして本当に地域ブランディングが成功するか?」不安があったそうです。

 

しかしながら組合から贈呈された今治タオルのふわっとした極上の使い心地に衝撃を受け、この素晴らしいタオルにまつわる地域ブランディングをみんなと一緒にやっていこうと決めたといいます。

 

 

 

 

 

今治タオルが生産される愛媛県今治市の水は染めに適した性質をしており、この水がタオル製品として極上の使い心地をもたらすとか。

 

赤ちゃんが使っても肌をやさしく包むような極めて高い安全性は、今治の生産組合にはごく当然のこととして考えられていたようですが、「この品質こそがブランディングの軸になる」と確信したそうです。

 

 

 

今治が地域ブランディングで成功した理由

 

今治タオルが衰退した1980年代は格安のアジアのタオルが持て囃されましたが、安かろうが肌に安全だとは謳われているわけでもありません。

 

こうした背景があって日本ではないどこかで生産されたタオルではなく、「日本の今治市という場所でつくられたタオルである」といった目印になるロゴを作成するに至ったそうです。

 

この今治タオルのロゴを付けられるタオルは以下のような極めて高い合格ラインが設定されています。

 

1000mlの水にトルの水の上に1p平方メートルのタオルを浮かべて5秒内に沈んだら合格

 

 

確かにタオルの本質は吸水性です。この強烈なインパクトがある合格基準は今治タオルの品質をわかりやすく物語ります。

 

 

 

この品質を伝えるために、前述の佐藤可士和氏は白色のタオルを今治の地域ブランディングの象徴としようとしたとところ、今治タオルの組合員はそれに懐疑的だったと言います。

 

 

なぜなら白色のタオルは、粗品などの配り物としてよく使われ、高品質のイメージとはかけ離れたイメージとして捉えられていたからです。

 

 

これに対し、「炊き立てのご飯のおいしさを伝えるためにカレーやピラフにしようとしない。全く同じように今治タオルの良さを伝えるために色も柄も必要ない。シンプルな白が一番伝わりやすい」と説得したそうです。

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今治タオルの地域ブランディングの成功ポイント
  • 今治タオルのブランディングの軸を、高品質で安全といったコンセプトに一極集中
  • わかりやすく明確なコンセプトゆえに、予算が少なくてもインパクトがあって反応も高かった
  • 今治タオルを生産する企業が参賀した集まりである組合が一番となって地域ブランディングに協力し合った

 

 

地域ブランディングスタートから2年目に「今治タオルが購入できる場所を増やし、数字がV字回復したのは4年目あたりから、スタートから3年は地道な努力を継続するだけ、だったと言います。

 

 

今治市という場の価値観を高め、そして今治タオルの品質のキーポイントとなっている水の美しさ、そして水をはぐくむ森そのものの魅力を伝える取り組みなども行われているようです。

 

 

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熊本県 くまもん

 

くまもん誕生のストーリー

「くまもん関連グッツ」で検索した結果のくまモングッツ一例

 

くまもんは2010年の九州新幹線開通のタイミングで、熊本県のPRキャラクターの位置づけとして誕生しました。

 

2010年から現在まで上のようなくまもん関連商品の売り上げは約1兆になると言われているものの、驚きですが熊本県の収益はゼロです。

 

くまもんがどのようにして熊本県の地域ブランディングで成功要因になったのか?について触れていこうと思います。

 

 

なぜくまもんは約1兆の経済効果を生み出せたのか?地域ブランディング成功の理由

 

熊本県知事である浦島郁夫氏は地域ブランディングで成功した理由について3点触れています。

 

 

熊本県知事が考える地域ブランディング成功要因3つ
  • くまもんのデザインをした水野学氏、そして熊本県天草市出身のプロデユーサー小山薫堂氏の存在の大きさ
  • 熊本県の戦略
  • ゆるキャラグランプリなどくまもん自身の大活躍

 

朝日デジタル

天皇陛下と皇后に「くまもんはおひとりなの?(中に入っている人は一人?の意味)」と質問されたくまもん
※くまもんの多忙なスケジュールはWEB上で公開されており、着ぐるみではなく「くまもん」という存在でとらえられています

 

 

特に二つ目の熊本県の戦略についてはくまもんの使用料を取らないといった斬新なスタイルが功を制しました。

 

くまもんを使用した企業が儲かり、モノが売れることによってくまモンの認知度が爆発的に上がり、くまもんというキャラクターは場所の制限を超えて世界中に広がっていったのです。

 

 

くまモンの仕掛人の一人であり、熊本県知事の浦島郁夫氏はリーマンショックだった当時を振り返って3つの政策を考えたといいます。

 

地域ブランディングと地域おこしに再起をかけた3つの視点
  • 経済的価値観から幸福量の最大化へシフト:幸せは経済だけでなく、県民の誇りや、熊本という場所の住みやすさ、希望や夢で決まるもの。
  • リーマンショックという世界的大不況を超えたその先にどんなことを思い描くかを県民と共有する
  • 経済的状況にかかわらず、熊本が抱える課題自体が県の閉塞感になりつつあり、これを解決していく

 

 

浦島県知事は、知事就任当初月給100万円を熊本県に返上し(手取り14万程度)、4年足らずで県が抱えていた借金1000億を減らしたと言います。

 

この知事の本気以上の姿勢はあらゆることに影響をもたらし、熊本県だけでなく日本や世界にくまもんブームを起こしたのでしょう。

 

 

熊本県の観光地スポットに挙げられるのは特に悠然とした阿蘇山、熊本城など、
そして熊本県地域団体商標として認定されているのは天草ぶり・小国杉・くまもと茶・多磨茶・晩白柚・3つの温泉地などがあります。
※地域団体商標は地域ブランドの保護制度であり、広く言えば特産品認定制度

 

 

海と山に面した自然の豊かさが育む場の力そのものが多様な魅力をつくっています。

 

 

熊本県がくまもんで地域ブランディングを成功させたポイントおさらい
  • くまもんの使用量を取らず、パッケージや商品のイラストなどに使う(地元)企業の儲けを最優先した
  • デザイナー水野学氏、熊本県天草市出身のプロデユ―サー小山薫堂氏の牽引
  • くまもん自身の大活躍
  • 熊本県知事浦島氏の本気の姿勢があらゆる人に火をつけた
  • 地域ブランド商品のラインナップが魅力的で熊本の場の価値を引き上げている

 

 

くまもんの思わず愛着がわくようなゆるいキャラは、女性や子供だけでなく、50代以降の男性や海外のファンも多いとか。嫌う人はおそらくいませんよね。。
商品サービス問わず汎用性抜群なくまもんは、浦島県知事の当初の戦略通り、いやそれ以上の爆発的な人気者になり国内でも一番認知度が高いマスコットキャラクターになりました。

 

 

 

地域ブランディングを成功させるコツ

 

さて、「地域ブランディングを成功させるコツ」のポイントは以下5つです。

 

 

地域ブランディングを成功させる5つのポイント
  • 何のために地域ブランディングを行うのか?目的の明確化
  • 地域ブランディングを遂行するチームを編成する(自治体の単独プレーを避け、住民を巻き込む)
  • 今地域が置かれている現状を把握する
  • 地域にふさわしい企画の草案
  • 地域に来てもらう理由は何かを明らかにする
  • 特産品をつくることだけに注力しない

 

 

地域ブランディング、を考えるときにともすると「おいしい食べ物を全面押しすればいい」というように考えられがちです。

 

 

しかしそれは商品のヒットの評価にはつながるかもしれませんが「地域の魅力が十分伝わった」とは言えないのかも知れません。地域ブランディングは地域そのものの価値を、人の中に埋め込んでいく作業だからです。

 

 

地域の魅力をユーザーに埋め込む有効策として、次は感覚体験の提供についてお伝えしていきます。

 

 

 

 

感覚体験を提供する地域ブランディングする

 

馬路村、今治市、熊本県、それぞれ地域ブランディングが成功したポイントは違います。また、1つだけのポイントが功を制したというよりは、さまざまな要因が相互に影響しあって地域ブランディングが成り立っています。

 

多くの人が見過ごしがちであり、そして今現在絶対に見過ごしてはならないのは「感覚体験を提供すること」にあります。

 

その理由はその土地のブランドをユーザーの中に存続させる方法として、感覚体験の提供があまりに有効なのです

 

ケロッグ・ダブ・ハーレーダビッドソン・シンガポール空港・レクサス・ディズニー・外資系ホテルなど例に暇がないほどの企業が感覚体験を顧客に提供しており、「これ以外はほかに考えられない」という価値を形成することに役立っています。

 

 

 

重複する部分もあるかもしれませんが、馬路村・今治市・熊本県の地域ブランディングでそれぞれそれがどこにあたるのかを簡単に振り返ってみようと思います。

 

 

 

 

 

馬路村の感覚体験提供

  • ゆずという香り高い柑橘を活用した加工食品販売
  • ゆずのアロマや美肌効果高いコスメブランド商品を販売して女性ターゲットへ拡販
※ゆずの可食部以外・本来廃棄されていた果皮と種を活用した非常に持続性高いビジネスモデル

 

ブランドに香りは必要不可欠ではありませんが、明らかにそのブランドを継続的に使いたいポイントの上位になるでしょう。

 

 

 

 

 

今治市の今治タオルの感覚体験提供

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  • ふわっとしたあかちゃんが使っても肌をやさしく包むような高い安全性
  • 肌に充てた瞬間から吸水性が感じられる品質

 

水をふき取るという目的が達成されたらタオルの役割は完了かもしれませんが、ふわっとしたやさしい使い心地だったらまた使いたいと思える強烈なポイントになります。

 

 

 

 

熊本県の感覚体験提供

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  • 熊本県の魅力として温泉などの「場の力」を明らかにしている
  • くまもと茶・多磨茶・晩白柚など嗅覚味覚で伝わる地域の特産を明らかにしている

 

雄大な阿蘇山を臨みながら楽しむ温泉は日々の疲れを癒したいビジネスマンには極上、しかもそこでおいしい味覚が体験できれば、ほかのどこでも体験できないような唯一無二の体験型価値提供になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像の出典
  • 1~4:yuzu.or.jp
  • 5:gurutabi.gnavi.co.jp
  • 6:くまもんオフィシャルFaceBook
  • 7〜8、10・11:oideya.gr.jp
  • 9:.city.imabari.ehime.jp
  • 12:ikeuchi.org
  • 13:yukoyuko.net

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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