ディズニーランドの感覚体験・ハイパー強者のマーケティング術
圧倒的な人気を誇るディズニーランドについて、本拠地で開園当時から行われていた感覚体験の提供についてお伝えしています。
執筆:企業のブランディングを手掛ける空間デザイン会社オーナー 雨宮悠天
ディズニーランドでますます重視されつつある感覚体験の提供
五感以外の感覚体験提供
アメリカで開園されたディズニーランドでは、当初からアトラクション同様にゲストへの感覚体験の提供が重視されてきました。
直近まではパイレーツオブカリビアン、タワーオブテラー、プーさんの冒険、ホーンテッドマンション、スペースシップアースでアトラクションにふさわしいにおいを演出する嗅覚感覚提供の意欲的取り組みが行われています。
スペースシップアースでアレクサンドリア図書館の火事の匂いを再現したシーンwdwnt.com
スペースシップアースのプロットを依頼されたブラッドベリーがアトラクションをきっかけに着想したディストピア小説摂氏451
嗅覚体験のほかは、下のような魅力的な感覚体験がディズニーの本拠地アメリカで行われているようです。
- アトラクション:映画アバターをフューチャーしたアバターフライトオブパッセージ
- 感覚体験:ドラゴンに乗って空を飛ぶときに、ドラゴンの心臓音が足で感じる圧覚
- アメリカフロリダ州
- アトラクション:映画スパイダーマンをフューチャーしたスパイダーマンアドベンチャー
- 感覚体験:3D映画中に、駆け巡るロボットを自らの手で手繰り寄せるような運動覚
- アメリカカルフォルニア州
東京ディズニーランドでは2023年以降アナと雪の女王、塔の上のラプンツエル、ピーターパンのアトラクションが予定されていますので、何らかの感覚体験がパーク内で実感できる”かも”しれません。楽しみですね。
さて、感覚体験がディズニーランドのような商業施設でなぜ重視されてきたのか?それはマーケティングの視点からみて圧勝できるからと言われています。
感覚は以下のような種類があると言われており、ディズニーランドでは過去から行われていた嗅覚体験に加え、上述しましたとおり圧痛覚や運動覚といった斬新な感覚体験も加えられています。
tsuusho.com
昔から行われていた五感体験だけでなく、それらのアトラクションではそれ以外の感覚を取り入れて没入感・非現実世界のリアリティのレベルをさらに押し上げているそうなのです。
没入感
tokyodisneyresort.jp
日本人の6〜8割が来園していると言われる東京ディズニーランドではビル4階建てに相当する土が盛られたり、樹木が植えられるなどして、園内から外界が一切見えないようになっています。
非日常の演出が重視されているディズニーランドでは、外界の日常が園内から見えるのがアウトとされており、非日常をシャットダウンすることでディズニーランドという世界観に没入し、アトラクションやパレードなどを一日中堪能することにフォーカスされているのです。
地元に溶け込みながら、かつ日常を感じさせない環境つくりがディズニーランドの人気を維持するベースとも言えます。
レプリカであるにもかかわらず、非現実的かつリアルな世界感
ディズニーランドは特定の時代にタイムスリップしたりどこでもドアで特定の場所に一瞬で足を踏み入れるかのような感覚にさせられる場所です。
東京ディズニーランドとディズニーシーではそれぞれ7つのエリアがあり、時代背景と場所の設定が精密に行われていますね。
つまりディズニーランドは時代や場所を再現したレプリカであり、来園者は喜んでこれらに迷い込むことを良しとしているわけです。
来園者はもちろんディズニーランドの世界が本物かどうかなどどうでもよく、このリアルに再現されたレプリカの世界が自分にとって楽しめるかどうかが重要なだけです。
まとめ
人は花火を見るときに花火全体を見たり、散りゆく火を視界で追いながら眺めたり、飽くまで動的な視点で花火を見ることで「ディズニーランドで見た花火はきれいだった」といったように感覚体験が残るようになっています。
あたりまえ過ぎる話でテレビや動画で動的な花火を見たとしても同じような感覚体験にはなりません。
感覚体験とはそれほど人の記憶に残り、「もう一度行きたい」という追体験をかき立てるものでもあります。
ディズニーランドがはじめから追い求めていることの一つは間違いなく感覚体験であり、これがハイパー強者たる理由でもあるのです。