モノの購入の意思決定はどのように行われている? ソマティックマーカーに見る商空間での香り演出
お客様に購入動機を聴いて、あまりにあっけない一言フレーズが飛び出してきて驚いた経験はありませんか?
コカ・コーラやユニリーバのような巨大企業をプロデユースしているマーティンリンストローム氏によると「モノを買った理由を聞かれても誰一人まともに答えられない。せいぜい『買いたかったから』というような言葉が出るだけ」だと言います。
現代人の消費行動における意思決定について、アントニオダマシオのソマティックマーカー説によって紐解いてみましょう。
報酬と罰に関する体の記憶でモノの購入判断をしている・ソマティックマーカー
マーティンは、モノの購入動機についてアンケートを取り、さらに脳スキャンによって脳のどの領域が活発になっているかを調査したところ、両者の結果は実にちぐはぐだったと言います。
実際、私たちが何か商品を購入するときにどんな過程を経て意思決定が行われているのでしょうか?
例えば「しっとりする髪質」の向上を目的にしたシャンプーやコンディショナーを探そうとして、ドラッグストアに立ち寄った場合でシミュレーションしてみるとしましょう。
こうした脳内の一人会話はどんな人でもごく自然に行わていると思いますので、まずは参考にされてみてください。
数年前に使っていたノンシリコンのシャンプーは、髪にいいことをしているとおもっていたのにパわパさになってしまって私には合わなかった【罰】
数日前に見たドラマに入っていたCM、ハリウッド女優スカーレットヨハンソンがグレートな金髪をかき分けてほほえんでいて思わずうっとりしてしまった。
このシャンプーやコンディショナーを使えばスカヨの髪質が手に入る【報酬】かもしれない。
輝きを害なく与えてくれる化学物質シリコンはある程度使うべき【報酬】。
前回試しに買ってみたコンディショナーは髪がギシギシする【罰】し、夏は湿気で猫毛が爆発して最悪だった【罰】…コンディショナーだけじゃこの爆発は抑えられないのかも。
だから今私の目の前にある 「1秒でヘアサロンの輝きとしっとり感」と謳うヘアパック剤のお試し品が付いている【報酬】コンディショナーを試さない手はないのでは・・・・
とは言えすぐ隣にさりげなく置かれているコンディショナーの香り!これも捨てがたい。 この香りだったら極上よね【報酬】・・・
実際は上のようなプロセスせいぜい1分くらいの時間で実行されており、「最も自分に便益を与えてくれそうな何らかの商品」を手に取っていることが多いでしょう。
シャンプーなんてどれも同じでしょと思うような男性でも、車のことだったら納得するかもしれません。
フェラーリを購入する男性の真の購入理由は、車の機能ではありませんよね。しかしSNSで必ずと言っていいほどフェラーリを載せたがる男性を見ると、購入理由がとこにあるのかを物語っているように思います。
アントニオ・ダマシオはこのような頭の中で繰り広げられる無意識・猛スピード・超高速早送りで行われる脳内での一人会話こそが、現代人の消費行動の意思決定を導いていると言います。
報酬と処罰に関する過去の体験を絞り込んで「最も苦痛を伴わないであろう現状」へ私たちを導くと言うのです。
アントニオダマシオの説はどうも納得してしまうものがあるように思えます。
このような意思決定は過去に身体が受け取った情動的な身体反応で、それが消費へと導くのははソマティックマーカーと名づけられています。
身体が不快だと感じれば罰、その逆は報酬になるわけですから、商品サービスは快・不快などの使い心地を追求すべきだよ、といったことになるでしょう。
商空間で報酬と罰に関する過去の情動を包み込む香り演出を
上でお伝えした報酬と処罰に関する情報処理が行われているのは主に下にある前頭前野です。
出典:毎日新聞
そして快不快を生み出すのは扁桃という領域で、香りを嗅ぐとこの扁桃が刺激されるのが分かっています。
扁桃と前頭前野が連絡を密に取り合って意思決定や行動に影響を及ぼしています。
これは快適な香りを商業施設に漂わせるアロマ空間デザインが、レクサスをはじめ日本中に至る場所で行われている理由にもなるでしょう。
弊社が提供させていただいている商空間のためのアロマ空間デザインはそれらを追求してきました。
デモのご依頼やご相談などは以下よりお知らせください。
■参考書籍:
Martin Rindstrorm
- 五感刺激のブランド戦略
- Buy・ology
- Brand Washed
博報堂 「五感」の時代